Claude Codeで「ちょっとしたサービスを作る」だけでは不十分
Claude Codeを使って個人プロジェクトやちょっとしたWebサービスを作り、満足している人は多いだろう。しかし、デジライズCEOのチャエン氏は、それだけではAIの本当の価値を引き出せていないと指摘する。
本当に価値が出るのは、「既存業務の中でAIが自然に動ける状態」を作れたときだ。つまり、AIを「使う」のではなく、AIが「業務の中に自然にいる」状態を設計することが本質である。
Claude Codeでちょっとしたサービスを作って満足している人は多いと思う。 でも、正直それだけだともったいないです。 本当に価値が出るのは、「既存業務の中でAIが自然に動ける状態」を作れたときです。
— チャエン | デジライズ CEO (@masahirochaen) March 7, 2026
チャエン | デジライズ CEO (@masahirochaen) のX投稿より:
@masahirochaen「大事なのは、『AIを使う』ではなく『AIが業務の中に自然にいる』状態を作ることです。」
– 引用元:X (Twitter)
チャエン氏が実践した4つのステップと、Claude CodeとOpenClawを組み合わせた2層構造の自律運用の全体像を解説する。
ステップ①:フォルダ整理 ── AIの性能はフォルダ構造で決まる
最初のステップは、意外にもAIツールの設定ではなくフォルダ構造の整理だ。チャエン氏は「AIの性能は、かなりフォルダ構造に左右される」と断言する。
AIエージェントがファイルを操作する場合、フォルダ構造が整理されていないと以下の問題が発生する。
- ファイル探索に時間がかかり、トークンを無駄に消費する
- 類似ファイルの区別がつかず、誤操作のリスクが高まる
- コンテキスト理解が浅くなり、出力品質が低下する
| 項目 | 整理前 | 整理後 |
|---|---|---|
| Downloadsフォルダ | 全ファイルが混在 | 用途別に自動振り分け |
| 顧客データ | デスクトップに散在 | 顧客名/docs/ に統一 |
| 議事録 | 日付だけのファイル名 | 顧客フォルダに自動分類 |
| 古いファイル | そのまま放置 | archive/に自動退避 |
フォルダ構造が整理されてはじめて、AIは正確にファイルを認識し、適切な処理を実行できるようになる。これはAI活用の最も見落とされやすい前提条件だ。
ステップ②:全ディレクトリにCLAUDE.mdを配置する
次のステップは、各ディレクトリにCLAUDE.mdファイルを配置することだ。CLAUDE.mdは、Claude Codeがプロジェクトを理解するための「地図」のような役割を果たす。
2026年のベストプラクティスとして、CLAUDE.mdは以下の階層で配置できる。
| 配置場所 | 役割 | 適用範囲 |
|---|---|---|
| ~/.claude/CLAUDE.md | 個人全体の設定・好み | 全プロジェクト共通 |
| プロジェクトルート/CLAUDE.md | プロジェクト固有のルール | プロジェクト全体 |
| サブディレクトリ/CLAUDE.md | 機能固有のコンテキスト | そのディレクトリ配下 |
| .claude/rules/*.md | 条件付きルール(ファイルパターン別) | 特定ファイルタイプ |
重要なのは、CLAUDE.mdは「長く書くほど良い」わけではないという点だ。2026年のベストプラクティスでは、「Claudeが迷う部分だけに絞る」ことが推奨されている。各行について「これを削除したらClaudeがミスするか?」と問い、不要なら削除すべきだ。長すぎるCLAUDE.mdは重要な指示がノイズに埋もれ、逆効果になる。
ステップ③:日常業務をスキル化する
3つ目のステップは、日常的に繰り返す業務をClaude Codeの「スキル」として定義することだ。チャエン氏の例では、/auto-minutesと打つだけで議事録が自動生成される仕組みを構築している。
スキル化とは、繰り返し行う業務をコマンド一つで実行できるようにすることだ。具体的には以下のような業務がスキル化の対象になる。
| スキル名 | 実行内容 | 従来の所要時間 |
|---|---|---|
| /auto-minutes | 会議録音から議事録を自動生成 | 30〜60分 |
| /downloads-triage | ダウンロードフォルダの全件スキャン・振り分け | 15〜30分 |
| /morning-brief | ニュース・メール・予定の要約 | 20〜40分 |
| /invoice-sort | 請求書を顧客別docs/に移動 | 10〜20分 |
スキル化の本質は、「毎回ゼロから指示を書く」手間をなくすことだ。一度定義すれば、誰でもコマンド一つで同じ品質の業務処理を再現できる。これはチーム展開においても大きなメリットとなる。
ステップ④:OpenClawで24時間自律運用する
最後のステップが、OpenClawによる24時間自律運用だ。OpenClawは2026年にGitHubで68,000スターを獲得したオープンソースのパーソナルAIエージェントで、PSPDFKit創業者のPeter Steinberger氏が開発した。
Claude CodeとOpenClawの違いは明確だ。
| 特性 | Claude Code | OpenClaw |
|---|---|---|
| 動作モード | 人間が起動し対話で進める | バックグラウンドで常時稼働 |
| 実行トリガー | 人間の指示 | cronスケジュール / イベント |
| 人間の関与 | 常に必要 | 不要(自律動作) |
| 比喩 | 一緒に仕事する相棒 | 勝手に仕事してくれる秘書 |
| コンテキスト | セッション単位 | 24時間永続 |
チャエン氏の表現を借りれば、Claude Code = 一緒に仕事する相棒、OpenClaw = 勝手に仕事してくれる秘書だ。この2つを組み合わせることで、完全自動と半自動の2層構造が実現する。
実践例:OpenClawの自律タスク一覧
チャエン氏が実際にOpenClawで自律運用しているタスクは多岐にわたる。cronスケジュールとイベントトリガーの2種類で構成されている。
| タイミング | 処理内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 毎週日曜 深夜3時 | 30日超ファイルをarchiveに移動 | フォルダの自動整理 |
| 毎週日曜 深夜4時 | 60日超のZoom録画を自動削除 | ストレージ圧迫防止 |
| 毎週月曜 朝10時 | Downloads 50件超でSlack通知 | 整理のリマインド |
| 毎朝7時 | ニュース・Gmail・カレンダー・Slack要約 | 朝のブリーフィング |
| Slackメンション時 | 質問回答・タスク作成・情報検索 | チーム支援の自動化 |
特に毎朝7時のブリーフィングは注目に値する。ニュース、Gmail、カレンダー、Slackの4ソースを横断してチェックし、テキストと音声の両方で自動送信する。人間が朝起きた時点で、すでにその日の全体像が把握できる状態になっている。
2層構造:「完全自動」と「人間の判断」の使い分け
チャエン氏の運用で最も示唆深いのは、全てを完全自動にしないという設計判断だ。OpenClawとClaude Codeを組み合わせた2層構造は以下のように機能する。
具体的な流れは以下の通りだ。
【自動】 OpenClawが月曜朝にSlack通知を送る。「Downloadsに67件あります。整理してください」
【手動】 通知を見た人間がClaude Codeを起動し、/downloads-triage と打つ。
【自動】 Claude Codeが全件スキャンし、整理を進める。議事録は顧客フォルダに振り分け、請求書は該当顧客のdocs/に移動、古いファイルはarchive/に退避。
| 処理タイプ | 担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 古いファイルのアーカイブ | 完全自動(OpenClaw) | ルールが明確、間違えても影響小 |
| Zoom録画の削除 | 完全自動(OpenClaw) | 日数基準で判断可能 |
| 請求書の顧客振り分け | 半自動(人間がトリガー) | 間違えると深刻な問題に |
| 議事録の分類 | 半自動(人間がトリガー) | 顧客判定に正確性が必要 |
全部を完全自動にしない理由は明確だ。請求書の振り分けや顧客判定のように、間違えるとまずい処理があるからだ。そこだけは人間がトリガーを引く設計にしている。これは、AIの能力を最大限に活かしつつ、リスクを適切に管理する実務者ならではの設計思想だ。
まとめ:AIが「業務の中に自然にいる」状態を作る
チャエン氏が実践した4ステップは、AIツールの使い方ではなく、AI時代の業務設計そのものだ。
- ① フォルダ整理:AIが正確に動くための土台を作る
- ② CLAUDE.md配置:AIにとっての「地図」を全ディレクトリに設置
- ③ 業務のスキル化:繰り返し作業をコマンド一つに圧縮
- ④ OpenClawで自律運用:cronで24時間バックグラウンド処理
そして最も重要なのは、完全自動と半自動の2層構造だ。間違えても問題ない処理はOpenClawに任せ、間違えるとまずい処理は人間がトリガーを引く。この「責務分離」の設計が、AI自動化を安全かつ実用的にする鍵となる。
「AIを使う」ことが目的ではなく、「AIが業務の中に自然にいる状態」を作ること。それが、2026年のAI活用における本質的なゴールだ。OpenClawのGitHubスター数68,000が示す通り、この流れは個人開発者からエンタープライズまで急速に広がっている。


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