2026年2月26日、Perplexity CEO Aravind Srinivas氏がXに投稿した長文記事「The AI is the Computer」が、テック業界に衝撃を与えている。61.5万回以上の閲覧、2,545いいね、2,659ブックマークを記録し、AIの未来像に関する最も重要な宣言の一つとなった。
その核心は驚くほどシンプルだ。「どんなに優れたAIモデルも、単独ではあなたにとって最高の仕事はできない」。Perplexityはバックエンドに19のモデルを配置した「massively multimodel」なプロダクトをローンチし、コンピュータの概念そのものを再定義しようとしている。
「The AI is the Computer」とは何か?
Srinivas氏の主張は明確だ。AIモデルは高度に専門化しつつあり、コモディティ化しているのではない。一つのモデルファミリーだけでは、あなたにとって最高の仕事を提供できない時代が来ている。
The AI is the Computer
— Aravind Srinivas (@AravSrinivas) 2026年2月26日
Aravind Srinivas氏の記事より:
「Claudeの最大の弱点は、Claudeとしか協働できないことだ。どのモデルファミリーも、他のモデルの才能なしには最高の仕事を提供できない。」
Srinivas氏はこれを「オーケストレーション」と呼ぶ。複数のモデルを指揮者のように協調させることで、個々のモデルでは到達できないパフォーマンスを実現する。Steve Jobsの言葉を引用して、「ミュージシャンは楽器を弾く。私はオーケストラを弾く」と表現した。
| 比較項目 | 単一モデルアプローチ | マルチモデルオーケストレーション |
|---|---|---|
| モデル数 | 1ファミリーのみ | 19モデルが協調 |
| 得意分野 | 限定的 | 推論・コード・創作を網羅 |
| タスク割り当て | 全てを一つが処理 | 最適なモデルに自動振り分け |
| 性能 | モデルの上限に制約 | 個別モデルを大幅に超越 |
| 思想 | 楽器の演奏 | オーケストラの指揮 |
ASI:Perplexity の秘密プロジェクト
この構想の原点は、Perplexity社内で「ASI」と呼ばれた実験プロジェクトだった。正式名称は特になかったが、時に「Artificial Super Intelligence」、時に冗談で「Another Slack Integration」と呼ばれていた。
ASIの仕組みはこうだ。Slackでタスクを送ると、ASIが自律的に作業を開始する。サブエージェントを生成し、異なるタスクに振り分け、ファイルを作成し、必要な情報を検索し、必要な場合にのみ確認を求める。
Srinivas氏:
「眠って起きたら、数週間分の仕事が完了していた。あるいは、数週間働き続けるよう指示すれば、確実に継続的に作業を遂行した。」
ASIはファイルシステムへのアクセス、数百のツールへの接続、コードの読み書き、CLIツールの使用、インターネットの閲覧が可能で、すべてのタスクを最適なモデルに振り分けるサブエージェントにオーケストレーションしていた。クラウド上のセキュアな開発サンドボックス内で、すべてが実行される。
| ASIの機能 | 詳細 |
|---|---|
| ファイルシステム | ファイルの読み書き・管理 |
| ツール接続 | 数百のツールに接続 |
| コード実行 | セキュアなシェルでコード実行 |
| ウェブブラウジング | Webアプリとコネクタへのアクセス |
| オーケストレーション | タスクを最適なサブエージェントに振り分け |
| サンドボックス | クラウド上のセキュアな開発環境 |
コンピュータの再定義:READ問題の解決
Srinivas氏は、コンピュータの本質を根本から問い直す。2011年、Googleは「インターネット、ファイル、bashターミナルだけでコンピュータが成立する」と考え、Chromebookを生み出した。
Googleはウェブがコンピュータの最重要要素であることを正しく理解していた。しかし、ウェブの最大の問題は「READ機能」にあった。ウェブは知識のストレージとしてWRITE機能は優秀だったが、READ機能は28年間ほぼ変わらないアルゴリズム検索に依存していた。
Srinivas氏:
「インターネットが地球の知識のストレージディスクだとすれば、PerplexityはREAD機能を解決した。」
そしてAIが登場した。Perplexityは最初の「アンサーエンジン」を構築し、Deep Researchに注力した。AIが正確にウェブ上のすべての知識を発見、分析、推論、提示できるようになったとき、READ問題はついに解決される。
ウェブが完全な読み書きストレージシステムとなり、エージェントがタスクを実行できるようになると、コンピュータに残されているのは「パーソナル」な要素だけだ。永続的なメモリ、個人のファイルとツール、プライバシーと好みに合わせた設定。そしてAIがこのすべてを処理する。
「誰もシンフォニーを一人では演奏しない」
Srinivas氏はオーケストラの比喩で、マルチモデル協調の本質を説明する。
ストラディバリウス(名器のバイオリン)は素晴らしい音を奏でるが、バスドラムのように体を揺さぶることはできない。そしてドラムだけではマーラーの交響曲のように心を動かすことはできない。
Srinivas氏:
「モデルメーカーは現代のストラディバリだ。私は全てのフロンティアラボの仕事に畏敬の念を持っている。しかし今、モデルはコモディティ化ではなく、専門化している。重要なのは、どう指揮するかだ。」
具体的なオーケストレーションの構成要素は以下の通りだ。
| コンポーネント | 役割 | オーケストラの比喩 |
|---|---|---|
| プランナー | 複雑な目標をサブタスクに分解 | 楽譜の解釈 |
| オーケストレーター | タスクを適切なエージェントに割り当て | 指揮者 |
| サブエージェント | 専門的なアクションを実行 | 各楽器の演奏者 |
| 共有メモリ | コンテキストと学習を保存 | 楽団の経験と記憶 |
GUIからの解放:コンピュータ400年の歴史
Srinivas氏はコンピュータの歴史を遡り、未来を描く。400年前、「computer」は天文学者の弟子を意味していた。やがて機械式、電気機械式、デジタルへと進化し、1974年にGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)が登場した。
Steve Jobsがパーソナルコンピュータをポケットに入れたという言説について、Srinivas氏は辛辣だ。「正確に言えば、彼は皆の顔の前にGUIを置いた。今は誰もがスクロールしている」。
過去49年間、GUIは「私たちがコンピュータを制御する方法」から「コンピュータが私たちを制御する方法」へと変貌した。このモデルへの疲弊は拡大している。
AIモデルはついに十分に進化し、コンピュータを本来の意味に戻す段階に到達した。自律的に、正確に、そして非同期に作業を行う。マウス、GUI、キーボードは重要な技術だが、あくまでインターフェースに過ぎない。
Srinivas氏:
「インターフェースは、コンピュータそのものほど重要だったことはない。」
Massively Multimodel:2025年、17日に1つの新モデル
Srinivas氏は、AIの未来は「マルチモデル」ではなく「massively multimodel(大規模マルチモデル)」だと主張する。AIがコンピュータの機能をより多く代替するにつれ、コンピュータの中心的活動は大規模マルチモデルオーケストレーションになる。
2025年には、平均17日に1つの新しいフロンティアモデルが市場に登場した。新しいAI能力が進歩するたびに、オーケストラに新しい演奏者が着席する。指揮者がバトンを振る。コンピュータが仕事を始める。
| 要素 | 従来のコンピュータ | AIコンピュータ(Perplexity構想) |
|---|---|---|
| OS | ハードコードされたソフトウェア | マルチモデルオーケストレーション |
| インターフェース | GUI・マウス・キーボード | 自然言語・非同期タスク |
| 検索 | キーワード検索(28年間変化なし) | Deep Research(AI読解) |
| ストレージ | ローカル+クラウド | ウェブ全体 + パーソナルメモリ |
| 実行者 | ユーザーが操作 | 19モデルが自律的に協調 |
Jensen Huang氏をはじめ多くのリーダーが、AIの未来はマルチモデルであるべきだと語ってきた。Srinivas氏はそれに同意しつつ、さらに一歩踏み込む。専門化されたモデルがチームとして協調しなければならない。
まとめ:「知性こそがコンピュータだ」
Perplexity CEO Aravind Srinivas氏の「The AI is the Computer」は、単なるプロダクト発表ではない。コンピュータの概念を400年の歴史から再定義する宣言だ。
重要なポイントを整理する。
- 単一モデルでは最高のパフォーマンスは出せない。19モデルのオーケストレーションが鍵
- PerplexityはウェブのREAD問題を解決し、知識のストレージを完全に機能させた
- コンピュータの中心はGUIではなくAIオーケストレーションに移行する
- 2025年は平均17日に1つの新モデルが登場。オーケストラは拡大し続ける
- モデルはコモディティ化ではなく専門化している。重要なのは指揮の方法
「コンピュータ」という言葉は400年間、常に同じことを意味してきた。計算し、自律的に正確に作業を行う存在だ。AIがその本来の意味を取り戻す時代が、今まさに始まっている。


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